若手研究者のアウトリーチ活動の一環として公開・運営してゆきます

松下幸之助記念志財団(日本人留学助成)

とってもノロマな更新で申し訳ないです🐢1年前、学振DC申請のことを書こうとして、あまりにも敵が強大すぎて(書きたいことがいっぱいありすぎて)、結果ストップしてしまってました🐢(意味ない)

しかも今年は自分もPD申請があって、わちゃわちゃしてる間に旬を過ぎてしまった感が否めないので、まずは今から準備しても間に合う助成金情報から更新を再スタートしたいと思います。

ということで今回は、「松下幸之助志記念財団」の日本人留学助成について書きます。同財団は、他にも日本に留学しにくる外国人留学助成とか、大学院生含む若手研究者にむけた研究助成とかを提供しています。それらと区別して、日本人留学助成は「松下幸之助国際スカラシップ」とも呼ばれます(以後は「松下国際スカラシップ」と書くことにします)。

前置き

私は、2021年夏に国際スカラシップに応募して、2年間の助成をもらいました(渡航期間は2022年10月〜2024年9月)。

ちなみに応募期間・採択期間ともに学振DC1とほぼ重なっていたので、私は別個に研究計画を考えたわけではありませんでした。書き方・考え方については後述しますが、大まかにいうとDC1の研究計画をベースに適宜カットしたり、松下国際スカラシップ仕様にふくらませたりしながら申請書を作成しました。

おすすめポイント

私が思う同財団の最大の魅力は、一度いずれかの助成に採択されると、芋づる式にその他の応募権(ブックレット出版や出版助成)をゲットできる点です。また、採択後に感じた魅力としては、財団の方々が優しい&スカラシップOBOGの方々が面白く、すばらしいコミュニティにコミットできる点です。中長期的に研究生活を送るうえで心強さを感じさせてくれます。

また助成金として本丸ともいえる支給額についても高水準といえます。これ1つ採択されれば、(本助成の対象地域である第三世界ならば)問題なく留学生活が送れるはずです。なので、アジア圏、アフリカ圏、南米圏への留学をお考えの方は迷うことなく応募したほうがいいと思います!

ということで、ここから先は「我こそは…!」という応募者に向けて、書いていくことにします。応募資格や支給内容などについては、公式サイト(日本人留学助成|松下幸之助記念志財団)をお確かめください。

財団が求める研究計画・人物像

まず、どの助成申請においても、どういう人物からの応募を求めているのか、どういう研究計画を採用したいと募集主体が考えているのだろうか、自分なりに分析してみましょう。たいてい募集要項に書いていることが多いですが、松下国際スカラシップの場合は随所にちりばめられているスタイルなので、いくつかのエッセンスを抽出しましょう。まず、当該ページにあるのは以下の文言です。

諸外国との交流の促進諸外国の発展と真の国際相互理解
寄与する研究を志す海外留学を助成しています。

前提として、松下国際スカラシップは留学対象地域がアジア・アフリカ・ラテンアメリカなので、ここでの諸外国はこの地域に限定されます。つまり、いわゆる先進国ではなく発展途上国への留学に財団は助成したいわけです。ただ、「真の」という文言をここでわざわざ入れているところからは、単に”先進国”日本から発展途上の国々に”施し”をしてあげましょう…というような、上から目線の研究計画は要らないですよ、という財団の意図も汲み取れそうです。

逆に、先進国への留学には助成しないという方針からは、”最新の”とか”最先端の”研究を取り入れたり、研鑽を積むという方向に価値を置いているわけではないことも読み取れそうです。それよりも、たとえば、留学先の内発的発展性や潜在性を見いだしたり、相互理解のために、まずは留学先の常識や価値観を受入れていく、といった他者理解の態度に、財団は価値を見いだしているような気がします。そういった姿勢が伝わるような申請書にまずはしたいところです。

では次に、申請の記入項目をみてみましょう。

  • 留学時の研究テーマ(最大50文字)
  • 副題(最大50文字)
  • 研究テーマの説明1:研究の学術的・社会的意義についても記載してください(最大750文字)
  • 研究テーマの説明2:財団の目指す国際相互理解、あるいは自然と人間との共生との関連について(最大450文字)
  • 計画・方法:なぜ渡航先(国・地域)や研究機関を選んだかも記載下さい(最大800文字)
  • 期待される成果(最大350文字)
  • 過去の実績(卒論・修論、論文・出版物、学振受給歴、留学経験など)(最大300文字)
  • 研究終了後の進路希望

申請の記入項目にも「財団の目指す国際相互理解」というワードが出てきます。ここでは研究テーマがそれにどう貢献するのかが問われているわけです。この留学がすぐさま大きな成果を実らせなくとも、将来的には国際相互理解や自然との共生へと向かうムーブメントに寄与していくものである、この留学はその種まき期間である…というような描き方をしたいところです。

研究終了後の進路希望をたずねているのも、財団が第三世界の国々と対等な立場でのパートナーシップを結べる人材に投資したいからなのではないか、と私は分析しています。なので、ここはアカデミア就職を希望しているか否かよりも、むしろ、その人の研究テーマ・留学が将来のビジョン(社会貢献)につながることを審査員にイメージしてもらえるような進路を書いた方がいいと私は思っています。と言っても、進路希望は長々と書くところではないので、研究テーマの説明2の欄で、将来のビジョン(研究の展望)を想起させておき、それと進路が合致していることを示すことが肝心だと思います。

ここまでは、どんな研究テーマの方もあてはまるところです。つまり財団は、単に優秀な人材に投資したいわけではなく、国際相互理解に寄与しうる人材(本人はもちろん、その留学成果がもたらすであろう波及効果)に投資したいわけです。言い換えると、財団は、こうした人材に投資することを通じて、社会に貢献してきたし、これからもしていきたいから、見ず知らずの若者の留学に率先してお金を出してくれるわけです。

繰り返しになりますが、松下国際スカラシップの申請にあたってのアピールポイントは、優秀さではなく”国際相互理解”の方にあります。ご自身の研究テーマをここに結びつけるのは必須です。

申請書類の書き方(要点)

研究計画書:研究テーマの説明1

但し書きに「研究の学術的・社会的意義についても記載してください」とあるので、ここは、研究の目的と背景、学術的・社会的意義を書きます。

すべての欄に言えることですが、あんまりたくさん書ける申請書ではないので、できるだけ簡潔に、専門用語は使わずに書きましょう。ここでは、背景と意義は混ぜながら書くといいと思います。たとえば、先行研究や社会背景にふれながら従来の問題点・課題点をあげて、本研究でそれをどう解決するか、それがどのような意義をもつかを書くのがベターかなと思います。

私の場合、3段落に分けて書いていました。第1段落は研究の概要です。第1文は目的を書きます。「本研究の目的は、~ある。」の形ですね。そのあと、その目的についてもう少し丁寧に説明するつもりで、理由を述べていきます。だいたい3文くらい(可能な限り、複文避けましょう)。第2段落と第3段落に、先行研究or社会背景+問題点+解決法+意義を書きます。順番はどっちでもいいですが、段落ごとに学術的意義、社会的意義と分かれているのがわかりやすくていいと思います。

研究計画書:研究テーマの説明2

但し書きにある通り「財団の目指す国際相互理解、あるいは自然と人間との共生との関連について」書きます。ここは、すでに述べているように最重要箇所だと思います。

私は2段落に分けて書いてました。研究テーマの説明1と同様に、第1段落は概要文(ここは2文くらい)、第2段落で概要文について具体的かつ詳しく説明する感じです。いろんな書き方があると思いますが、私は、一般的な環境・社会問題+留学先国がおかれている状況(歴史的経緯)+研究対象がもつ潜在性+国際相互理解や環境保全への貢献という流れで書いていました。

研究計画書:研究計画・方法

但し書きに「なぜ渡航先(国・地域)や研究機関を選んだかも記載下さい」とあるので、ここでは留学先の選定理由と調査方法を書きます。

選定理由は素直に書けばいいと思いますが、なぜこの研究テーマなのかを理解してもらう欄としても使えます。私の場合、3段落に分けて書いていました。第1段落は研究対象についての説明(絨毯の定義・評価)、第2段落は留学先での具体的な研究対象と現地研究者(選定理由)、第3段落に調査課題を3点にまとめて書いていました(課題テーマ+説明として具体的に何をみるのか)。

研究計画書:期待される成果

ここはヒントが少ないのですが、社会貢献的な成果/展望+学術的な成果(具体的な学会or学術誌名をあげて発表先を書く)の両方を書けばいいと思います。とくに社会貢献的な成果/展望は、研究テーマの説明2と関連しているといいでしょう。

研究計画書:過去の実績、研究終了後の進路希望

今までどんなことをやってきたのか、今後どんなことをやっていきたいのかを教えてくれ、というだけなので、ありのままを書きましょう。

経費計画書

ここはよっぽどいい加減な書き方をしない限り、採択には関係しないと思います。自分で見積もりをしてみましょう(実際、変更が生じても問題ありません)。松下国際スカラシップはわりと使途の制限が少ないですし、限度額いっぱいまで計算して記入しましょう。

生活基盤については、現地での人脈(指導教員に紹介してもらう等でもOK)や語学習得の状況と、問題が生じた場合の対応策を書いておけばいいと思います。財団は、無謀で危険な渡航に援助するわけにはいかないので、ここは安心材料を提供してあげるつもりで書けばいいでしょう。

自薦書

ここは自由筆記かつ、わりと文量を割ける箇所ですね。私の場合、なぜこの研究テーマをやるに至ったのか、その背景を自身の来歴や思想、将来の展望なんかを織り交ぜながら人物的に説明することに前半部分を費やし、後半部分は遂行能力があることを具体的な成果をあげながら説明し、さいごに願望を述べて締めくくる、という感じで書いていました。

さいごの願望には、どういう風に社会貢献したいか、といった大きな希望(ここで国際相互理解とか自然との共生につながるとなお良し)を書き、その第一歩として留学に臨みたいというような書きぶりにすると自然だと思います。すべての申請書に言えることですが、申請書を読んだ後に「うん、この人を応援してあげたい!」と審査員が思ってくれるような、ある種の感動のエッセンスをさいごに持ってくる構成のキレイさは、あながちバカにできないものがあると私は思っています。夢、語っちゃいましょう。

おわりに

本記事は、松下国際スカラシップの申請書作成にあたっての書き方・考え方について分析整理してみました。これが必ずしも正解とは限りませんが、実際に採択された一経験者として、当時の申請書をふりかえりながら、抑えるべきポイントを推測してみました。ちょっと抽象度が高かったかもしれませんが、研究計画を練ったり、文字化するうえで、参考になるところがあればうれしいです。

松下国際スカラシップでは「国際相互理解」がキーワードだったように、こういった助成金をだす募集主体には必ず目的があります。要するに、こういった申請は、募集主体の目的を正確に読み取れていること、それに即した回答(申請書)を出せていることが求められます。そうして、互いにマッチングしたときに採択されるわけですね。自分の研究テーマなら、この財団の期待に応えられるはずだ…!と閃いた方は、ぜひチャレンジしてください。

また、別記事で面接選考についても書けたらいいなと思っています。

おまけ:応募・採択後のフロー(2021年度応募時)

<5月頃>応募要項の公開(Web)

<6-7月頃>応募(Web専用フォーム)

<9月初旬>書類審査結果の通知(メール)

<9月中旬>面接審査(オンライン)

<10月初旬>採択結果の通知(メール)

<2月>授賞式(*コロナ禍のためオンライン)

<※随時>研究期間の変更届(メール)

<渡航1カ月前>書類提出(メール)

<渡航前書類提出後>1回目振込の確認(メール)

<留学先入国時>渡航開始の連絡(メール)

<渡航開始後3カ月おき>2回目振込の確認・留学状況の報告(メール)

<帰国時>渡航終了の連絡(メール)

<帰国後1カ月以内>留学報告書類の提出(メール+)

<翌年度10月>成果発表フォーラム

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